天然アワビの漁獲量推移（日本全体）

※2023年3月　データ更新済み

日本国内の天然アワビの漁獲量は年々減少しています。
そこで農林水産省のデータやニュースなどを分析し、まとめました（1978〜2021年）。
※2022年分は、農林水産省がデータを収集中です。

１９７８年：５３７７t
２０２１年：　７０７t

※統計最低年
２０２０年：６６９t

２０２１年では４３年前の１９７８年に比べ、日本国内で天然アワビが１３％しか獲れません。

原因は、アワビを獲りすぎて子孫が残りにくくなったこと、水温の上昇、海藻がいなくなる磯焼けが日本各地で進行していること、アワビ稚貝放流の効果が薄れてきたこと等が挙げられます。

近年では東日本大震災により、日本の天然アワビの漁獲量が転換期を迎えました。
日本の天然アワビ漁獲量の内、東北地方は約３〜４割程度を占めますので、東日本大震災による影響が大きなものとなっています。

【東日本大震災による短期的・長期的な影響】
２０１１年３月１１日に発生した東日本大震災により、天然アワビは短期的・長期的な影響を受けました。

（短期的な影響）
特に津波により、東北地方で漁獲できるサイズのアワビや将来漁獲できるアワビの稚貝、海藻などが強大な引き波で沖に流されたり、転がる岩等に潰されたりしたことや、船等の設備が流された為、アワビの漁獲がまともに出来ず、天然アワビの漁獲量が数年間減少しました。

この震災により、東北地方の水産業関連施設（漁港、船舶、定置網、イカダや網イケス等の養殖施設、市場、造船、加工、販売、製氷・冷蔵）の被害総額はおよそ９,０００億円、漁業関連施設の９割が損壊したと言われています。

（長期的な影響）
東北地方においてアワビを飼育する施設を多く失ったことにより、2011年から2014年までの3年間、アワビの稚貝の放流がほぼ出来ませんでした。当地方は寒冷地の為、アワビの稚貝が漁獲できるサイズになるまで3〜5年かかります。よって、2011年から2014年まではアワビの成貝を主に漁獲し、2015年頃からはアワビの稚貝の成長が間に合わず、アワビの漁獲量が減少しています。

農林水産省の統計にある２００３〜２０２１年までの、都道府県別天然アワビの漁獲量の推移を調査しました。そこでは、全ての年度で岩手県が１位となっています。

直近2021年のアワビ漁獲量
（１位）岩手県：１３８t（全体の１９．５％）
（２位）北海道：　７４t（１０．５％）　※宮城県も同t数となり、同位
（４位）千葉県：　６９t（９．８％）
※（参考）愛媛県：４０t（５．７％）

なぜ岩手県がずっとアワビの漁獲量で１位なのでしょうか？

岩手県ではアワビを毎年漁獲出来るように、様々な取り組みを実施しており、その結果により１位となっています。

岩手県のアワビを保護する取り組み
（1）各漁協による稚貝放流
　※２０２２年では合計７９０万個の稚貝を放流し、例年同数程度を放流。

（2）稚貝放流後の、わかめや昆布などの餌やり。

（3）漁獲期間の設定
　※11月〜翌年2月までの４ヶ月間のみをアワビ成貝の漁獲期間とする。

（4）漁獲方法の制限
岩手県の北部海域を除き、アワビの漁獲方法を鉤ぎ取りに限定。
　※鉤ぎ取り・・・漁船に乗って、水面から箱メガネでアワビを見つけて、先に鉤のついた棒でアワビを一つずつ獲る方法


愛媛県や三重県では、海女や海士による潜水漁（水中に潜って目で確かめて直接アワビを獲る方法）にて、効率よく「獲ったど〜」とアワビを獲ってきた一方、親アワビが大きく減ることになり同時に子供も減り、アワビが獲れなくなって辞めた海女も多くいます。

特に和丸水産のある愛媛県の佐田三崎半島にある伊方町付近では、4/15〜10/30頃までの約６ヶ月間アワビを漁獲でき、岩手県よりも期間が長いです。

その他の地域については、アワビの口開けをご覧下さい。

鉤ぎ取りは高等な技術を必要とし、潜水漁よりも効率がはるかに悪いですが、かえって資源を後世に残し、漁民を永く生かすことが出来るというのは、何とも皮肉であり大量生産・大量消費という、この社会そのものを考えさせられます。

効率が良いのは、良いことなのですけどね。それだけじゃない世界もあるということです。

都道府県別天然アワビの漁獲量の推移
（2003年〜2021年）

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