アワビの密漁との戦い

アワビは高価で夜の方が獲りやすい為、よく密漁の被害にあいます。

密漁者は夜な夜な超高速漁船に乗り、漁場につくと明かりを消し、冷たくないように黒いウェットスーツを着て水中ボンベを担いで潜水漁をします。この超高速漁船とは、水産庁や海上保安庁の船から逃げられるように大体時速100kmの速度が出ます。

海なのに笑える程の速度です。漁師も自警団を組んで見回りに出る所もありますが、いかんせん通常の漁船は、大体時速20〜30kmしか出ませんので、まず見失います。

しかも密漁者を現行犯逮捕した所で、手元に密漁品（アワビ、サザエ、ナマコ等）を持っていなければ捕まえられません。なので密漁者はそのような危険性があれば、まず密漁品を船外に放出します。
つまり、密漁者を捕まえるのはかなり困難だと言うことです。

また、密漁のプロ（？）は海上保安庁の無線を傍受しています。
それを絶えず聞いており、逃げるタイミングを伺っています。

漁師は漁業権に守られてはいますが、資源の維持管理の為に稚貝の放流を行って獲り過ぎないようにしていますので、密漁があると死活問題になります。
出荷までに2〜3年かかる、イカダからカゴに吊るして育てる海面養殖アワビでも、引っ張り上げられて盗まれる事例があり、漁師は困窮します。

密漁で検挙された場合は、3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられます（漁業法第138条）。ただし上記の様にアワビ等の密漁品を保有した状態での現行犯逮捕が一般的ですので、検挙し辛いのが現状です。

これらの背景を分かっていて密漁品を購入する水産業者もいます。大体10cm以下の天然アワビは表のルートでは獲ってはいけません（場所ごとの捕獲ルールによる）ので、それ以下のものが店頭に並んでいたら怪しいですね。

【アワビの漁獲制限殻長】　※漁業調整規則による
岩手県：９cm以上
山形県：１０cm以上

千葉県：１２cm以上
東京都：１１cm以上
神奈川県：１１cm以上

福井県：１０cm以上

愛知県：８cm以上
静岡県：１１cm以上

兵庫県：９cm以上
和歌山県：１０cm以上

島根県：１０cm以上

愛媛県：１０cm以上
徳島県：９cm以上

佐賀県：１０cm以上
鹿児島県：１０cm以上

当数字は、天然アワビを海から獲って良いサイズ（殻の長さ）を示します。
漁師は天然アワビを海底から獲ったあと、漁師が所属する自治体設定値よりもアワビのサイズが小さいと分かったら、その場で海にアワビを戻さないといけません。

上の数字のように、全国的に概ね１０cm以上のアワビの漁獲が認められています。
そこで例えば愛媛県のどこかの店頭で、８cmの天然アワビが販売されていれば、そのアワビは密漁品の可能性があると言えます。

※アワビを海に戻す場合、通常は漁師が船から海にアワビを投げ捨てます。
本当はこうすると、アワビが海底に着底するまでに、外敵（タコなど）に食べられやすくなるので好ましくありませんが、わざわざ海底まで潜ってアワビを戻す漁師はいませんね。

密漁者と共謀して水産業者がアワビを買い取り、一般向けに販売して海上保安庁に逮捕されるケースがあります。
この場合は、密漁者が水産業者にいきなり話を持ちかけるのではなく、先に水産業者がアワビを買い取ることを前提として合意の上で密漁し、取引されます。

天然アワビがどんどんなくなっています。
資源を守っていきたいですね。

漁船の奥に見える海上保安庁の船「せとぎり」

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